マイファーマーを探そう。
2011.6.15
茨城新聞2011・6・11「茨城論壇」掲載 私の拙文
私は常陸太田市の北端、里美地区で有機農業を営んでいます。生産物は地元や首都圏の消費者やレストラン、市の学校給食などに直接販売しています。旬を大切に、地域にある資源を有効に循環利用することを心がけてきました。また、消費者の方とは相互の信頼関係を基本にして、単にお金だけではない関係作りを目指しています。
しかしこの度の大震災と福島原発の事故では放射能という目に見えない敵との戦いを余儀なくされています。震災直後の3月には、露地栽培している葉物類の出荷を全面的に止めたにもかかわらず、首都圏の一部の消費者からのキャンセルが相次ぎました。特に有機農家として一番食べてほしい小さな子供さんを持つ方々が離れてゆきました。これは正直つらいです。でも先方の気持も痛いほど分かるので、納得するしかありません。ただ、救いもありました。配達を通して日ごろからお付き合いの深かった常陸太田市や日立市の皆さんは辛抱強く私たちを励まし、買い支えてくれました。遠方の方からも沢山の応援メッセージを頂きました。有機農業をしていて良かったと思う瞬間です。
私の有機農業経営の核心は「信頼関係」にあります。今回の福島原発の事故では、この根っこの部分を大きく揺るがされました。強いきずなが断たれたという点では、私が受けた損害は「風評被害」ではなく「実害」だと考えています。これはなかなか「お金」で計ることはできません。しかし、やせ細ってはいるものの、「信頼関係」によって救われている面があるのも事実です。茨城でもごく一部の福島原発まで100キロ圏内にいながら、今でも元気に種を播き続けていられるのも消費者の皆さんとの絆があるからと感謝しています。
もちろん消費者の皆さんへはきちんと情報を伝えています。野菜や土の分析をすれば、データもそのまま伝えます。まずは農家である私たちが自分の生産物や周りの環境をしっかり把握すること。そしてその情報を消費者と共有することが大切です。消費者の皆さんが必要以上に疑心暗鬼になってしまうことが「風評被害」の原因のひとつだと考えています。地産地消のように、生産者と消費者の距離が縮まり風通しが良くなれば、お互いに不幸である風評被害の拡大は未然に防ぐことが出来るでしょう。
電気の分野では、大量生産、大量流通の遠隔輸送体制が見直されようとしています。実現には様々なハードルがあるでしょうが、意志あるところに道は開けるというものです。振り返って、茨城県は豊饒な大地を持つ、全国でも有数の農業県です。皆さんの身近にも、毎日作物や土と向き合って優れた食べ物を生産している農家さんがきっといるはずです。「身土不二」といって、その土地の作物を食べるのが最も身体に良いとも言われています。皆さんも今回の震災をきっかけに身近な「マイファーマー」を探してみたらいかがでしょうか?皆さんのちょっとした不安にも、心ある農家さんならきっと自分の言葉で誠実に答えてくれると思いますよ。「活きた土」から生まれる言葉を聞いてほしいですね。
次回は8月20日の予定。
私は常陸太田市の北端、里美地区で有機農業を営んでいます。生産物は地元や首都圏の消費者やレストラン、市の学校給食などに直接販売しています。旬を大切に、地域にある資源を有効に循環利用することを心がけてきました。また、消費者の方とは相互の信頼関係を基本にして、単にお金だけではない関係作りを目指しています。
しかしこの度の大震災と福島原発の事故では放射能という目に見えない敵との戦いを余儀なくされています。震災直後の3月には、露地栽培している葉物類の出荷を全面的に止めたにもかかわらず、首都圏の一部の消費者からのキャンセルが相次ぎました。特に有機農家として一番食べてほしい小さな子供さんを持つ方々が離れてゆきました。これは正直つらいです。でも先方の気持も痛いほど分かるので、納得するしかありません。ただ、救いもありました。配達を通して日ごろからお付き合いの深かった常陸太田市や日立市の皆さんは辛抱強く私たちを励まし、買い支えてくれました。遠方の方からも沢山の応援メッセージを頂きました。有機農業をしていて良かったと思う瞬間です。
私の有機農業経営の核心は「信頼関係」にあります。今回の福島原発の事故では、この根っこの部分を大きく揺るがされました。強いきずなが断たれたという点では、私が受けた損害は「風評被害」ではなく「実害」だと考えています。これはなかなか「お金」で計ることはできません。しかし、やせ細ってはいるものの、「信頼関係」によって救われている面があるのも事実です。茨城でもごく一部の福島原発まで100キロ圏内にいながら、今でも元気に種を播き続けていられるのも消費者の皆さんとの絆があるからと感謝しています。
もちろん消費者の皆さんへはきちんと情報を伝えています。野菜や土の分析をすれば、データもそのまま伝えます。まずは農家である私たちが自分の生産物や周りの環境をしっかり把握すること。そしてその情報を消費者と共有することが大切です。消費者の皆さんが必要以上に疑心暗鬼になってしまうことが「風評被害」の原因のひとつだと考えています。地産地消のように、生産者と消費者の距離が縮まり風通しが良くなれば、お互いに不幸である風評被害の拡大は未然に防ぐことが出来るでしょう。
電気の分野では、大量生産、大量流通の遠隔輸送体制が見直されようとしています。実現には様々なハードルがあるでしょうが、意志あるところに道は開けるというものです。振り返って、茨城県は豊饒な大地を持つ、全国でも有数の農業県です。皆さんの身近にも、毎日作物や土と向き合って優れた食べ物を生産している農家さんがきっといるはずです。「身土不二」といって、その土地の作物を食べるのが最も身体に良いとも言われています。皆さんも今回の震災をきっかけに身近な「マイファーマー」を探してみたらいかがでしょうか?皆さんのちょっとした不安にも、心ある農家さんならきっと自分の言葉で誠実に答えてくれると思いますよ。「活きた土」から生まれる言葉を聞いてほしいですね。
次回は8月20日の予定。