あこがれの職業へ尽力
2012.3.31
茨城新聞「茨城論壇」2012年3月31日掲載 1年間いい勉強させていただきました。
震災から2回目の春はいつにも増して寒さが身にしみます。私が住む常陸太田市の里美地区は、ようやく梅の花がほころび始めました。例年、この季節は露地野菜の端境期ですが、この時期だけビニールトンネルやハウスを使って作った野菜を織り交ぜて、なるべく品薄にならないようにひと手間かけて消費者の方にお届けしています。
今春は他にもやることが一杯です。4月1日から放射性物質の新基準が施行されます。私の農園では昨年の5月以降、野菜からは一度も検出されませんでした。さまざまなデータを見る限り、畑の放射能は確実に減っています。従って今年、うちの野菜からセシウムが検出される可能性は非常に低いと思われます。だからと言って何もしなくてもよいとは思っていません。作物に吸わせないこと、これが大事です。農園では今年、以下の取り組みを実行しています。
①深耕。畑を特殊な機械で深く耕して、セシウムを土壌深く拡散させます。②吸着剤の散布。ゼオライトや貝化石など多孔質の土壌改良材を散布して、セシウムを吸着します。③土壌分析。ミネラルのバランスを整えてセシウムの吸収を防ぎます。④良質の堆厩肥。土の腐植を増やしてセシウムを吸着します。
これらの対策は、つまるところ「豊かな土作り」のための技術と何ら変わりなく、放射能対策をきっかけにしてあらためて農業の根幹である土作りの大切さを見つめ直しているところです。私は放射性物質は水に流してはいけないと考えています。水はいずれ流れて海に出ます。日本人は昔から「3尺流れば水清し」などと言って何でも水に流しますが、放射性物質や化学農薬など現代社会には流してはいけないものがたくさんあるはずです。茨城の漁業の一日も早い再生のために、私は農地で放射性物質を受けとめ、作物に移行させない技術を実証していこうと思います。「豊かな土」にはその力があるはずです。
放射能汚染は人間の生活環境よりも自然環境への影響が長く残るようです。農産物からの検出は新基準のもとでも減少していくと思われますが、当然ながらなかなか減らない品目があり、それに関わる生産者はいまだに苦悩の渦中にいます。消費者の皆さんには茨城の1次産業を根気強く応援してほしいと強く思っています。
また、生産者はできうる対策を地道に実行すること、そして知り得た情報を公開することが大事です。勇気をもって公開することが信用につながります。今年は生産者と消費者の絆が試される年です。震災から1年という異例の早さで厳格化された新基準値が、「消費者(流通業者)栄えて生産者滅びる」ということにならないことを祈っています。補償されるだけで生きていけるほど人間は強くありません。
茨城の農家として、放射能はもうコリゴリというのが正直な気持ちです。1次産業とはその土地の風土と人に生かされる産業です。それが弱体化したことが原発の誘致を招き、今回の事故につながったともいえます。ならば私は農業を魅力的な職業として再定義していきたい。子供たちのあこがれの職業=農業を目指して、これからも里美の地で微力を尽くしてまいります。
震災から2回目の春はいつにも増して寒さが身にしみます。私が住む常陸太田市の里美地区は、ようやく梅の花がほころび始めました。例年、この季節は露地野菜の端境期ですが、この時期だけビニールトンネルやハウスを使って作った野菜を織り交ぜて、なるべく品薄にならないようにひと手間かけて消費者の方にお届けしています。
今春は他にもやることが一杯です。4月1日から放射性物質の新基準が施行されます。私の農園では昨年の5月以降、野菜からは一度も検出されませんでした。さまざまなデータを見る限り、畑の放射能は確実に減っています。従って今年、うちの野菜からセシウムが検出される可能性は非常に低いと思われます。だからと言って何もしなくてもよいとは思っていません。作物に吸わせないこと、これが大事です。農園では今年、以下の取り組みを実行しています。
①深耕。畑を特殊な機械で深く耕して、セシウムを土壌深く拡散させます。②吸着剤の散布。ゼオライトや貝化石など多孔質の土壌改良材を散布して、セシウムを吸着します。③土壌分析。ミネラルのバランスを整えてセシウムの吸収を防ぎます。④良質の堆厩肥。土の腐植を増やしてセシウムを吸着します。
これらの対策は、つまるところ「豊かな土作り」のための技術と何ら変わりなく、放射能対策をきっかけにしてあらためて農業の根幹である土作りの大切さを見つめ直しているところです。私は放射性物質は水に流してはいけないと考えています。水はいずれ流れて海に出ます。日本人は昔から「3尺流れば水清し」などと言って何でも水に流しますが、放射性物質や化学農薬など現代社会には流してはいけないものがたくさんあるはずです。茨城の漁業の一日も早い再生のために、私は農地で放射性物質を受けとめ、作物に移行させない技術を実証していこうと思います。「豊かな土」にはその力があるはずです。
放射能汚染は人間の生活環境よりも自然環境への影響が長く残るようです。農産物からの検出は新基準のもとでも減少していくと思われますが、当然ながらなかなか減らない品目があり、それに関わる生産者はいまだに苦悩の渦中にいます。消費者の皆さんには茨城の1次産業を根気強く応援してほしいと強く思っています。
また、生産者はできうる対策を地道に実行すること、そして知り得た情報を公開することが大事です。勇気をもって公開することが信用につながります。今年は生産者と消費者の絆が試される年です。震災から1年という異例の早さで厳格化された新基準値が、「消費者(流通業者)栄えて生産者滅びる」ということにならないことを祈っています。補償されるだけで生きていけるほど人間は強くありません。
茨城の農家として、放射能はもうコリゴリというのが正直な気持ちです。1次産業とはその土地の風土と人に生かされる産業です。それが弱体化したことが原発の誘致を招き、今回の事故につながったともいえます。ならば私は農業を魅力的な職業として再定義していきたい。子供たちのあこがれの職業=農業を目指して、これからも里美の地で微力を尽くしてまいります。